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グラスファイバーの
基礎知識

グラスファイバーとは

グラスファイバーは工業生産された初めての無機繊維であり、
その特徴である強度、耐熱性、不燃性、電気絶縁性や耐薬品性などの為、広範囲の産業で利用されています。
近年では建築資材からFRP(繊維強化プラスチック)、プリント配線基板用電気絶縁クロスなど、様々な用途に広がっております。
そのため、世界の産業界に広く認められ、産業に欠かせない重要な素材となっております。

ガラス繊維はその名の通りガラスから作られた繊維ですが、糸のように長い繊維(長繊維)や、
グラスウールのようにふんわりとした感触のもの(短繊維)など様々な形状をしています。
これらの製品は、その用途によって使い分けられています。

  • ガラス長繊維

    • ヤーン・ロービング・
      ガラスクロス・マット・パウダーなど
    • 主な用途絶縁材や補強材、沪過材など
  • ガラス短繊維

    • グラスウール
    • 主な用途断熱材や吸音材、保温材など
グラスファイバーの製造フロー(原繊)グラスファイバーの製造フロー(原繊)
グラスファイバーの製造フロー(クロス)グラスファイバーの製造フロー(クロス)

樹脂材料・成形の
基礎知識

熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂とは 熱硬化性樹脂は、熱をかけると流動し、そのまま加熱を続ける事で硬化します。これを再冷却してから再加熱したとしても流動しません。
一方、熱可塑性樹脂は熱をかけると軟化・流動し、冷却することで硬化します。これを再加熱すると再び軟化・流動します。
熱可塑性樹脂の中でも、工業用部品に主として使用される樹脂をエンジニアリングプラスチックと言います。

  • 不飽和ポリエステル樹脂(UP)

    不飽和ポリエステル樹脂は無水マレイン酸のような不飽和二塩基酸および無水フタル酸のような飽和二塩基酸とグリコール類とを縮合させたものです。
    ガラス繊維等に熱硬化樹脂を含侵させて成型品をつくるFRP(Fiber Reinforced Plastics)用途が多いですが、注型・塗料などの繊維強化せずに使用する非FRP用途もあります。

  • ビニルエステル樹脂(VE)

    ビニルエステル樹脂はエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応して得られた重合体を、架橋性モノマーなどで溶解した熱硬化性樹脂です。
    耐酸性、耐アルカリ性、機械的特性に優れるため、パイプや浄化槽などの耐食用途や自動車の構造部材などの用途に使用されています。

  • エポキシ樹脂(EP)

    エポキシ樹脂は分子中にエポキシ基を持つ樹脂の総称です。最も種類が多いのはフェノール系のグリシジルエーテル型で、その中で最も代表的で使用量の多いものがビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合によって得られるエポキシ樹脂です。
    電気絶縁性・耐熱性・接着性などを持ち、電気部品・塗料・土木建築・接着剤などの用途で使用されています。

  • ウレタン樹脂/ポリウレタン(PU)

    ウレタン樹脂は分子中にイソシアネート基が2つ以上ある化合物と2つ以上の水酸基を持つ化合物を反応させたものです。
    熱硬化性タイプと熱可塑性タイプがあります。
    フォーム・塗料・接着剤・エラストマー・弾性繊維などの用途で使用されています。

  • フェノール樹脂(PF)

    フェノール樹脂はフェノール類とアルデヒドとの付加重合反応によるもので、酸触媒によるノボラック型とアルカリ触媒によるレゾール型があります。
    電気絶縁性に優れており電気器具や車両の電装部品などに使用されています。

  • ポリエチレン(PE)

    ポリエチレンはエチレンを重合した構造を持ち、製造方法や分子量、分枝数により低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など様々な性質を持っています。
    フィルムや容器などの用途に使用されています。

  • ポリプロピレン(PP)

    ポリプロピレンはエチレンの1つの水素がメチル基で置換されたプロピレンを重合させた熱可塑性樹脂です。
    重合触媒の種類やコポリマー組成などによって耐寒性・透明性・力学的性質は様々です。汎用樹脂の中で、最高の耐熱性を誇り、比重が最も小さくて水に浮かぶという特徴があります。
    汎用樹脂としては耐薬品性に優れ耐熱水性も良いです。
    文具、家電、自動車部品、包装材料、繊維製品など幅広い用途に使用されています。

  • ポリスチレン(PS)

    ポリスチレンはエチレンの1つの水素がベンゼン環で置換されたスチレンを重合した透明な汎用ポリスチレン(GPPS)と、スチレン・ブタジエンゴムの添加により衝撃性を改良した乳白色の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)があります。
    包装用フィルムや、テレビなどの家電、事務機器等に使用されています。発泡させたポリスチレンではブロック材・魚箱などの用途に使用されています。

  • ポリ塩化ビニル(PVC)

    ポリ塩化ビニルはエチレンの1つの水素を塩素で置換し重合した熱可塑性樹脂です。塩化ビニル樹脂は可塑剤の添加量による弾性率分類で、硬質と軟質の2種類があります。
    硬質には可塑剤の添加量は少量です。軟質には多量の可塑剤が添加されます。代表的な可塑剤はDOPですが、要求性能に合わせ可塑剤の種類を変更します。
    住宅建設・土木関連用途が多く、硬質ではパイプや雨どい、軟質では床材やホースなどに使用されています。

  • ABS樹脂(ABS)

    ABS樹脂はアクリロニトリル (Acrylonitrile)、ブタジエン (Butadiene)、スチレン (Styrene)共重合樹脂で、意匠性・力学的特性・耐薬品性に優れています。
    ブタジエンの配合比率で様々な衝撃グレードが存在します。
    車両用、スポーツ用品・レジャー用品・玩具などの雑貨用、掃除機といった家電製品やOA機器などの用途に使用されています。

  • AES樹脂(AES)

    AES樹脂はABSのブタジエン系ゴムの代わりにエチレンプロピレンゴム(EPDM)を使用し、基本特性はABSと同等で、耐候性を改良した樹脂です。
    自動車部品・OA機器・住宅部品などの用途で使用されています。

  • AS樹脂(AS)

    AS樹脂はアクリロニトリル(Acrylonitrile)、スチレン (Styrene)の共重合樹脂です。
    透明な非晶性のプラスチックでABS樹脂の様に剛性や耐衝撃性が優れています。
    熱には弱いですが、加工がしやすい特徴があります。
    透明性と耐衝撃性を活かした冷蔵庫のトレーといった家電製品や自動車部品、日曜雑貨などの用途で使用されています。

  • 熱可塑性エラストマー

    熱可塑性エラストマーとはゴムのような弾性・伸縮性の性質を持った高分子の総称です。
    熱を加えると軟化し、冷却すればゴム状に戻る性質から射出成形や押出成形などで成形されています。
    スチレン系、オレフィン系など様々な種類のエラストマーがあります。
    熱によって容易に変形する為、耐熱性を要する用途には適しません。しかし、その性質から自動車用途から日曜雑貨品まで幅広い用途で使用されています。

  • ポリエチレンテレフタレート(PET)

    ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを重縮合したポリエステルです。
    結晶化速度が遅い特性を持ちますが、結晶構造を発現しないように急速に冷却することで透明化しやすくなります。
    繊維やフィルム、ペットボトルなどの用途に使用されています。

  • ポリカーボネート(PC)

    ポリカーボネートは分子の構造の中に炭酸エステル構造を持つポリマーの総称です。透明性・耐候性・対衝撃性・耐熱性などの強みがあります。
    高流動性の低分子量から衝撃特性のある高分子量までの任意の分子量のポリマーを作る事が出来ます。
    DVD等の光ディスクやガラス繊維強化グレードによるレンズ鏡筒、ヘッドランプレンズなどの各種自動車部品、ガラスの代替などの用途に使用されています。

  • ポリブチレンテレフタレート(PBT)

    ポリブチレンテレフタレートはエステル統合を分子内に持つ熱可塑性ポリエステルの一種です。ガラス転移温度の関係からガラス繊維が入っているグレードが多いです。
    吸湿率・吸水率が小さく、寸法・力学的性質・電気的性質の変化が少ない性質を持ちます。
    コネクタ等の電気・電子部品分野や、スイッチ部品の自動車分野などの用途に使用されています。

  • 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)

    変性ポリフェニレンエーテルは、耐熱性・力学的性質・電気的性質の優れたPPEに、PS(完全相溶が可能)、PA(高耐熱性)、PP(低吸湿性と低比重化)をアロイ化したグレードがあります。
    誘電特性や電気絶縁性などの電気的性質に優れており、ホイールキャップといった自動車分野の用途や、アダプタといった電気・電子分野の用途に使用されています。

  • ポリフェニレンサルファイド(PPS)

    ポリフェニレンサルファイドはベンゼン環と硫黄が交互に繰り返される構造を持つ結晶性の合成樹脂です。酸素存在下で熱架橋した酸化架橋型PPSと、重合工程だけで高分子量化した直鎖型PPSがあります。
    フィラー強化(ガラス繊維など)グレードが多く用いられます。
    耐熱性・高剛性・電気的性質・難燃性があり、コネクタなどの電子・電気分野や自動車分野の電装化部品としての用途で使用されています。

  • ポリアミド(PA/PA6/PA66)

    ポリアミドは主鎖にアミド結合を持つ樹脂で、モノマーの種類とその組み合わせによって様々な種類があります。使用量の多いのはPA6とPA66です。
    ガラス転移温度の関係から、高温度・高応力下では、ガラス繊維などの入った複合グレードが使用されます。
    吸湿率・吸水率が大きく、寸法・力学的性質の変化が大きいです。
    耐薬品性・耐衝撃性・耐摩耗性に優れており耐熱性・高負荷のかかるギア類やコイルボビンなどの用途で使用されています。

射出成形

射出成形とは射出成形機と金型を用い、溶融させた樹脂を高圧で金型に注入し、冷却することで製品を製造する成形方法です。
材料を溶かす、金型に注入する、金型で材料を冷却する、金型から取り出す、製品の微調整をするという流れが一般的です。複雑な形状の製品も可能で、連続して大量に製造することも可能で様々な分野で展開されています。

射出成形射出成形
押出成形押出成形

押出成形

押出成形とは押出成形機と金型を用い、溶融させた樹脂を形作りたい形状にした金型から押出、冷却することで製品を製造する成形方法です。
金型により様々な形状の製品を長尺かつ大量に製造することに適しています。

ブロー成形

ブロー成形とは押出成形機と金型を用い、溶融させた樹脂を金型の中に挟み、圧縮空気を吹き込み冷却することで製品を製造する成形方法です。
ボトル形状を成形することに適しています。

ブロー成形ブロー成形
真空成形真空成形

真空成形

真空成形とはシート状の材料と金型を用い、加熱して軟化したシート状の材料を金型の上に置き、シートと金型の間を真空にすることで形を作り、冷却することで製品を製造する成形方法です。

FRPの基礎知識

FRP(繊維強化プラスチック)は、ガラス繊維や炭素繊維またはアラミド繊維などで樹脂を強化した材料であり、
成型法により最終製品の寸法・形状・機械的特性・コストなどが変動します。
ここでは代表的なFRPの製造方法をご紹介致します。

ハンドレイアップ成型

ハンドレイアップ成型は、人の手で樹脂をハケやローラーでガラス繊維に含浸させ、脱泡しながら所定の厚さまで積層する成型法です。この成型法は、最も一般的な成型法です。

  • 長所

    • 多品種少量生産に適している
    • 設備投資が少ない
    • 複雑な製品の成型が可能
  • 短所

    • 作業環境が悪い
    • 無圧成型であるため繊維含有率が低い
    • 人手によるため品質が作業者の熟練度に左右される
ハンドレイアップ成形ハンドレイアップ成形
スプレーアップ成形スプレーアップ成形

スプレーアップ成型

スプレーアップ成型は、スプレーアップ機を使用して、ロービングを適当な長さに切断しながら、樹脂を同時に成型型に吹き付けて成型する方法です。

  • 長所

    • ハンドレイアップ法と比較して、強化基材の裁断工程が低減できる
    • 生産効率がハンドレイアップ法と比較してよい
  • 短所

    • ハンドレイアップ法と異なり、スプレーアップ機等の設備投資が必要
    • 繊維含有率等の品質管理が難しい
    • 作業環境が悪い

フィラメントワインディング(FW)成型

フィラメントワインディング法(Filament Winding)は、ロービングを1~数十本引き揃え、樹脂を含浸させながら回転する金型(マンドレル)に所定の厚さまでテンションを掛けて所定の角度で巻き付け、硬化後脱型する成型法です。この成型法はFRP(繊維強化プラスチック)の成型法の中で繊維強化材の強さを最も有効に利用した成型法です。

  • 長所

    • FRPの中ではガラス含有率が高く、高い機械的強度が得られる
    • 機械成型の為、品質が安定している
    • 大量生産と自動化が可能である
  • 短所

    • 設備投資が必要
    • 円筒状、球形が主で回転体に限られ、形状に制約がある(用途例 パイプ、圧力容器、釣竿、ゴルフクラブシャフトなど)
フィラメントワインディング(FW)成形フィラメントワインディング(FW)成形
SMC成形SMC成形

SMC成型

SMC成型法に使用する材料がSMC(Sheet Molding Compound)です。SMCとは、まず、樹脂、硬化剤、増粘剤、内部離型剤、充填材などを混合した樹脂ペーストをチョップドストランドに含浸させ、両面をフイルムで被服したシート状の物を所定の温度条件で加熱し増粘させ、取扱い性を良好にしてシート状にしたものです。SMC成型は、そのSMCシートを、裁断、計量して、金型にチャージして、さらに加圧加熱し硬化させ成型品を得る成型法です。

  • 長所

    • 成型サイクルが短く大量生産に適している
    • 作業環境が良い
    • リブ、ボス、インサート、ネジ等の同時成型が可能で、寸法精度も良い
    • 機械成型のため、品質が安定している
  • 短所

    • プレス、金型、加熱装置等の初期の設備投資が大きい
    • 強度が比較的低い

BMC成型

BMC(Bulk Molding Compound)は、チョップドストランドと樹脂を混練したものを塊状、ペレット状にした材料です。
成型法は圧縮、トランスファー、射出成型が用いられます。

  • 長所

    • 成型サイクルが短く、複雑な形状の大量生産に適している
    • 充填材を多く使用できる為、寸法安定性が向上する
    • 全工程の自動化が可能である
  • 短所

    • 繊維の補強効果は比較的小さい
    • 設備投資が大きい
BMC成形BMC成形
引抜成形引抜成形

引抜成型

引抜(Pultrusion)成型は、強化基材に樹脂を含浸させ金型に引き込み、型内で所定の断面形状に硬化させ、引抜き装置で連続または間欠的に引抜いて所定の長さに切断し、同断面の成型品が長尺で得られます。

  • 長所

    • 連続した同断面の成型に適している
    • 大量生産に適している
    • 強化基材を切断しないので強度特性に優れている
  • 短所

    • 多品種少量生産には向かない
    • 設備投資が大きい

ガラス繊維製品の
安全性について

ガラス繊維製品の安全性について
Qガラス繊維を吸ってしまった場合の影響
Aガラス繊維は、人工的に製造された非晶質繊維で、折れても繊維の太さに変わりがありません。
肺の奥深くまで到達しにくく、万一体内に入っても、身体の防御機構により体外に排出されます。
ガラス繊維製品の安全性について
Q皮膚への影響は?
Aガラス繊維は不活性の物質で、皮膚の表面に触れたとしても一過性のかゆみを感じることはありますが、皮膚炎を生じたりアレルギーを起こすケースは少ないです。まれに皮膚が過敏な方に炎症等が発生した場合は、ガラス繊維を取り除くことにより解消されます。
ガラス繊維製品の安全性について
Qアスベストとガラス繊維の違い
Aアスベストは、天然の結晶性鉱物繊維で、1ミクロン以下の極めて細い繊維の集合体です。
また体内でさらに割れて細い繊維になり、肺胞等に刺さったまま排出されずに異物として生涯体内に留まり、さまざまな病気を引き起こす原因となります。
一方、ガラス繊維は、人工的に製造された非晶質繊維(結晶質でない繊維)で、折れても繊維の太さが変わらないため、体内に吸収されにくく、万一吸入されても体内には残りません。
安全性に関する詳細を確認したい場合は硝子繊維協会のHPの参照をお願い致します。